診療における業務デジタル化、通院不要のオンライン診療の時代が到来?

「海外DXレポ」第1弾、今回のテーマは「オンライン診療」です。
オンライン診療アプリ、皆さんは使ったことがあるでしょうか。新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化するなか、受診者さんの安全・安心を確保するために、「対面ではない診療」の需要が徐々に伸びています。医療におけるデジタルトランスフォーメーションの一翼を担うのは「オンライン診療」です。

厚生労働省は、2020年4月13日から、感染症が収まるまでの期間限定の措置として、初診時のオンライン診療を解禁しました。これまで、初めての診察や新たな症状での診察では、対面での診察が原則でした。その一方、実は海外ではデジタル化の波がすでに医療現場に押し寄せてきました。例えば中国では、2015年、オンライン診療アプリ「平安グッドドクター(平安好医生)」がリリースされました。そのあと、アリヘルス(阿里健康)、微医(WeDoctor)などのオンライン診療アプリが続々と登場しました。
今回は利用ユーザー数がなんと3億人を越えた中国のオンライン診療アプリ「平安グッドドクター」についてご紹介したいと思います。
※3億人がどれくらいかというとアメリカの人口が約3.2億人(2019年)です!

「平安グッドドクター」はどのようなアプリ?

「平安グッドドクター」は中国平安保険グループが運営しているAI技術を利用した医療プラットフォームです。平安保険グループは社名にもある通り保険事業を主軸としている企業ですが、現在は保険以外の様々なサービスをデジタル上で展開しています。保険事業以外に、消費者との接点の創出を図るために、2013年ころから、ヘルスケア事業も立ち上げました。
「平安グッドドクター」はヘルスケア事業の中核を担い、オンライン診療から処方箋発行、オンライン決済、薬の配送まで一連のサービスを提供しています。2020年6月時点で、利用ユーザー数が3億人、MAUは6000万人を超え、中国No.1オンライン診療アプリを誇ります。
平安保険グループはデジタルを活用して、ビジネス変革を起こし、新たなビジネスチャンスをつかみました。まさにデジタルトランスフォーメーションの事例だと思います。

ワンストップでおこなうサービス

「平安グッドドクター」は主に3つの機能を備えています。

1.オンライン診療

私は実際に「平安グッドドクター」アプリをダウンロードして試してみました。
オンライン診療の流れは下の図(図1)のように、まず自分の基本状況を入力します。AIチャットが起動し、ユーザーはAIと対話しながら、年齢、性別、症状などを一通りヒアリングされる仕組みになっています。症状などを入力したら、AIが自動的に適切な医者とマッチングし、問診画面に移ります。AIによって問診が最適化され、短時間で正確な診断を導くことを可能にしています。次のステップは、医者の診察です。写真アップロード機能や通話、テレビ電話機能もあり、オンラインでも受診者の顔や患部を見ながら支障なく診療することができます 。

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図1:診療の流れ
出典:「平安グッドドクター」アプリより執筆者作成

2.通販アプリ

医者から処方箋をもらったら、そのままアプリで薬の購入もできます。もちろん、処方薬だけではなく、市販薬やサプリメントなども販売しています。さらに、日用品や家電製品、本なども販売していて、医療関連だけではなく、通常の通販アプリとしても利用できます。

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図2:通販アプリ
出典:「平安グッドドクター」アプリより執筆者作成

3.医療機関の予約

「平安グッドドクター」は医療機関の予約機能も備えています。中国では、日本によくある個人経営の専門クリニックは数がとても少なく、国営の総合病院を利用するのが主流です。紹介状なしで受診できますので、軽い病気でもこうした大病院にかかります。その結果として、大きい病院ほどいつも大混雑という状況に陥ります。
そのため、総合病院などで受診するための整理券が転売屋によって法外な高額で売られるようなことも多々ありました。「平安グッドドクター」を利用すれば、病院の診察が待ち時間なしで予約できるのもユーザー体験を向上させているポイントです。

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図3:予約画面
出典:「平安グッドドクター」アプリより執筆者作成

ビジネスモデルとしての差別化

「平安グッドドクター」は「保険+ヘルスケア」という新しいビジネスモデルを生み出しました。アプリ内では医療関連の保険商品が販売しています。また、スタッフがオンラインで保険についてのご相談を承ります。
このように、平安保険グループはただ保険商品を売るではなく、ヘルスケア事業を通じて、お客さまの「生活支援」を目指しています。もともと平安保険グループの強みである保険事業と新規のヘルスケア事業が相互に補強して、お客さまとの関係性を強化することができました。

まとめ

以前に「加速するドラッグストア/薬局のオムニチャネル化」という記事で、オンライン処方箋やBOPIS(Buy Online, Pick up In Store)サービスを提供しているOMO(Online Merges with Offline)型薬局についてお話ししました。今回紹介した「平安グッドドクター」も同じくOMO型のサービスです。デジタル化により、オンラインとオフラインを融合して、消費者の多種多様なニーズに応えることが出来ています。
Withコロナ・ Afterコロナの社会において、基礎疾患などを持つ方が対面で受診されること自体もリスクが伴う行為になっています。特に高齢化が急速に進んでいる日本において、ご年配の方や移動が困難な方にとって、わざわざ病院に行かなくても受診できるのは医療改革として大きなインパクトを与えられると思います。
受診からお薬の受け取りまでを安心して行える「オンライン診療」は、今後も選択肢のひとつとして活用されるべき仕組みではないでしょうか。医療における業務デジタル化、そしてオンライン診療の未来は全世界的にさらに広がっていく予感がしますね!

参考:
平安好医生:关于我们
人人都是产品经理:互联网在线医疗APP产品分析之平安好医生
腾讯网:平安好医生更名平安健康,战略升级背后显现互联网医疗市场激烈竞争格局

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この記事の執筆者:楊 溢ヨウ イツ(プロモーショングループ)

新卒でドリーム・アーツに入社
2021年からプロモーショングループの一員になりました。
記事執筆は初心者ですが、おもしろい海外情報を発信していきたいと思います!